誰も書かないビデオ撮影テクニック


 ビデオ撮影のテクニックを書かれた本や雑誌は沢山発売されていますが、当たり前過ぎるのか、まだ書かれていない事が沢山あります。特に旅行ビデオの撮影のいろいろは書かれているものがほとんどありません。
旅行ビデオを撮影する場合における家庭用ビデオカメラが持つ問題や、それを使用するユーザー層自体が持つ問題については当然ながら書かれていません。(汗・・・・・・)
そして そういった問題の中に、撮影者が旅行中 自分の肉眼での旅行に楽しさに熱中してしまい、その「最大の撮影チャンス」を失っているケースが多いという事もあると思います。以下は家庭用ビデオカメラで撮影する事のもろもろの周辺についてハードウエア側から見た個人的な意見をパソコン通信で書いたものの転載です。いろいろと意見はあると思いますが撮影の参考になれば幸いです。
 ビデオカメラは大きくて重い方が・・・

この頃 ビデオカメラは小さくて軽い方が受けるようで そういった意見が多く見受けられます。そういった価値観を持つ方が多いという現実はあるのでしょうが 個人的な意見としては小さくて軽い事のデメリットもあるという事を書いておきたいと思います。
小さく軽いという事のメリットは言うまでも無い事です。極端な例としては、「大きかったので税関に見つかって持ち込めない国があった」などという事も体験しました。しかしそれでもやはり大きく重い意味というのはあって、

 ●絵の安定

絵の安定は ビデオカメラ撮影入門講座などに参加するといかに絵を安定させて撮影するかが先ず教えられます。カメラを出来るだけ いい加減な持ち方で持ち その手をぶらぶらしてみて下さい。そのカメラの固有な振動が映ると思います。大きくて重いほど振動も小さければ振動がゆっくりです。慣れてくればその映像からどの程度の大きさのカメラで撮影したかがなんとなく判るようになると思います。
では家庭用の軽い、小さいカメラではどうするのかという事になるのですが、普通は何も道具がなければ いかに努力して安定させるかという事になります。パンやティルトは御法度です。その場合、小さい、軽いカメラで安定させるという事は気力や努力が必要です。大きく、重いカメラはそこそこの努力で安定します。
しかし 大きくて重いというデメリットを考えれば そうも言っていられないケースがありますから カメラ自体は小さく、軽いが、必要に応じて大きく、重くする。 結局 一脚や三脚、ビデオライト、電池なども敢えてカメラに取り付けてしまうという手段があります。一脚、三脚などは取り付けてから地面に固定して撮影するのが本当ですが 敢えて一脚、三脚とカメラを取り付けたまま 移動しつつ撮影すると大きく、重いと同じ効果が得られます。本来はこういった使用方法は カメラの取付ネジの部分に過大な力が加わり、やってはいけない撮影方法ですので その判断はユーザーがしなければなりませんが それでも三脚+カメラの移動しながらの撮影は安定し、不思議な感覚を体験します。
三脚や一脚では という時には 大形バッテリーを敢えて使って重くするなどという撮影方法もあると思います。


 ●大きくて重い事による仕様上、設計上の制約が少ない

小さなカメラはその小ささか故に操作スイッチ類の操作性が犠牲になっている事が多く、撮影中に操作スイッチ間の距離が短いので押し間違った、押したら画面が揺れたという経験が多いと思います。更に問題なのは 操作スイッチが簡単に押してしまえる事です。 押しボタンスイッチはビデオカメラの操作スイッチとしては芳しくないものだと思いますがいかがでしょう。また同じ形状の押しボタンスイッチが一列に並んでいるというカメラはほとんど誤操作に対する配慮が無いと思っても良いと思います。
そういった事からも 操作スイッチ間の距離、スイッチのタイプなど小型化のデメリットを感じます。
また大きくする事によって設計上の自由度が増し、無理な設計もしなくて済む、肩載せならば一定以上の大きさである事が当然ですから更に自由度も増すでしょう。その事が間接的に性能向上、耐久性の向上につながるという事もあるでしょう。


 ●レンズの広角化

家庭用ビデオカメラのほとんどのレンズが望遠よりになっている現状では安定した絵を撮る事は望遠になっているだけ努力が必要です。大雑把に言って 家庭用ビデオカメラに 0.7倍のワイドコンバージョンレンズを取り付けた状態が業務用カメラでよく使われるレンズの画角が一緒です。そういう意味では家庭用ビデオカメラにワイコンは必需品ではないかと思います。これは三脚を使わない手持ち撮影が多い 家庭用としての使い方から言えば 更に意味のある事です。ワイコンによる画面の安定は手振れ防止装置の効果とは比較になりません。(子供の学校での行事で望遠て撮影する場合などは当然除きます)ワイコンを取り付けて 画角を拡げる事によって カメラを振動させても拡げた分、絵として振動を感じなくなります。

何度も書いていますが 広角化をしないのは、レンズのコスト削減と手振れ防止装置装着によるユーザーへの宣伝効果を狙ったものでしょう。はっきり言って 広角側で撮影する場合、手振れ防止装置など必要と思う人はすくないと思います。(望遠側では必要ですが)
倍率でカタログ競争するなら広角側で是非やっていただきたいと思います。



 空はみんな逆光です・・・


以前から家庭用ビデオカメラに何故「逆光補正スイッチ」が無いモデルがあるのか不思議に思っているので書いてみます。この頃はこのスイッチがある事が多くなってきているようで 家庭用1CCDカメラでもなんとか見られる映像も撮りやすくなってきているように思います。
家庭用ビデオカメラで一番 多く操作しなくてはならないスイッチはこの逆光補正スイッチ(ボタン)ではないかと思います。元々ラチチュードの狭いビデオカメラの中で更に一番狭いカメラですから逆光時の黒ツブレはもう「真っ黒」という映像が当たり前でした。これは白飛びを起こさないようにする為に露出を絞れば当然 黒ツブレが起こるのは当然で、その為にいろいろな仕掛けがあるようですがどれも 当然の事ながら完全に自動化出来る性質のものではありません。大きな明暗の差かある時など自動的な対処は不可能でしょう。その為に明部はどんなに白飛びを起こしても良いから暗部を適正な露出にする事は人間がする以外ないでしょう。その為のスイッチが逆光補正スイッチです。このスイッチの変わりに 逆光モード、スノーモードという事で常に適正露出より露出を開けるモードを持つものもあります。

ではこのスイッチやこのモードを使う時とはどういう時かというと普段の屋外撮影のほとんどという事になります。逆光時はもちろんの事、順光でもこのモードは有効に思えます。特に空が映っている時はこのモードは必須と言えるでしょう。晴天、曇天、雨天 全て被写体の中で空が一番明るくなっています。その為 大概のカメラは画面上部の一部分での露出判定の重みを小さくして、「そら」が明るくてもそれに対応した露出にならないようにしています。しかしそれでも実際はその効果が足らない事が多く、きちんと撮影するには手動露出にしなければなりません。
従って 屋外の大部分は手動で露出を決めるか 逆光モードで撮影という事になります。どのメーカーとはいいませんが 常に画面が暗いメーカーのビデオカメラはこういった姿勢で撮影しないと鑑賞に耐えないものもあります。

本来 ラチチュードの広い業務用3CCDでさえも この逆光モードを持っている池上のカメラもあり。個人的にはかなりの確率で屋外はこのモードで撮影しています。(業務用カメラは手動露出が基本かもしれませんがそれでもこの機能がついている事に留意して下さい)

DVが発売される前の8ミリカメラではこのスイッチが付いているものと無いものがありましたが そのスイッチの効果は歴然だと思います。その後、今までこのスイッチも随分普及してきたようです。「手動露出があればこのスイッチやモードは必要が無い」という意見もありますが 実際に使ってみれば全く 用途が異なりますし、露出が刻々と変化する撮影には手動露出は使い物になりません。そしてそういう撮影が 家庭用ビデオカメラの撮影スタイルだと思います。

極論を書けばこのスイッチが無いカメラは家庭用ビデオカメラとしては問題だと思います。又 元々画面が明るく感じるメーカーもありますから このスイッチの必要性をそれほど感じないかもしれません。しかしそれでも 現実の明暗差を考えれば 必須の機能だと思います。

雑誌 ビデオサロンの98年1月号 P54,55の「難しい測光の画面」で何が違うかよくご覧下さい。以前にも書きましたが 簡単にだれでも撮影出来るのは3CCDカメラであって 1CCDカメラはそれなりの技術が必要です。そしてその事があまり 語られないようです

以上 日頃 暗い映像ばかり撮っているのでその反動で書いてみました。実際 画面が明るすぎて困ったという経験は1年に1回ぐらいしかありませんが 逆に暗いはもう年中ですから こういう事を書くようになりました。しかも プランビコンの映像を見てからは「暗いの嫌だ」を益々実感するようになりました。

●「池上」 業務用のビデオカメラのメーカーです。先日業務用の最高機種のHC-D45を購入しましたらやっと「明るい」ビデオカメラに合う事が出来ました。
●「プランビコン」 CCDカメラが全盛になるまえに 光を電気信号に変換していた デバイスです。CCD較べて 何倍もの明暗差を受容する能力があります。この性能はCCDに較べずっと高いのですがメンテナンスの問題があって消えつつあります。



その他

 マイクロホン

今までVX1000を海外に持っていったのですが、大事に使っているつもりでもやはり無理がかかっているようでいろいろと細かい部分を壊してしまいます。
特にマイクロホンがカメラ上部にあり 象さんの鼻状態になっていて無理に上から押してしまうようで 首が折れてしまった事が2度ほどありました。
壊れた部分はドライバーで簡単に交換出来るのでそのパーツを余計に注文してあります。 しかし内部の配線にも無理が加わって切れてしまう事も考えられますので避けなければなりません。 先日 VX1000を修理に出しましたらマイクロホンとレンズの間に発泡スチロールがはさまって帰ってきました。 多分 首の部分を折ってしまう人は私だけではないのでしょう。
今では発泡スチロールを両面テープで固定してあります。静止画参照。

 雑誌等でも書かれていますがVX1000のマイクロホンは過大な音を録音すると歪んでしまいます。 三峡の時に船の汽笛が歪んで入っていました。 対応としては外部マイクロホンを使って、ボリュームなどでレベルを下げて録音するしかないようです。


 VX1000の画質

 家庭用では定評のあるVX1000の映像ですが業務用カラメに較べいろいろと不満があります。 たしかに解像度だけを見ると業務用のカメラに迫るものがあるのですが残念ながらVHSにコピーした場合その解像度の高さはほとんどスポイルされてVX1000の持つ課題だけが残ってしまいます。


<1>
低輝度部分の色乗りが悪い、特に逆光時などの暗い部分の色がほとんどありません。 カスタムプリセットで色の濃さで調整してもこの傾向は改善されません。 業務用カメラでは暗い部分にもきちんと色が乗っています。

<2>
ペデスタルの調整が出来ない。ビデオカメラの一番暗い部分のレベルをほとんどの業務機が調整出来ます。 特にVX1000の暗部の色乗りが不足している為、この「黒」の暗さが更に目立ち、画面全体が暗く長時間の視聴は疲労感が発生します。又この 暗さが普通の業務用カメラとの差となり、この2種類の素材を使って作品を作る場合 注意が必要です

<3>
1,2,共関連しますが 緑色、特に木々の青さに暗さがつきまとい鮮やかな緑を記録する事がなかなか出来ない。

8ミリカメラからデジタルのDVカメラになって綺麗になったというのは一面では事実ですが厳密には正しくないように思います。撮影されたビデオテープの画質は
  ビデオカメラの画質+ビデオテープの画質
で決定されますので 実際には

  業務用ビデオカメラの画質 と 家庭用ビデオカメラの画質の差は
  DVテープの画質 と 8ミリビデオテープの画質の差を
  上回るという事です。

VX1000の再生画とTV放送と較べると大きな差がある事からもこの事は判っていただけると思います。

1999/11/11